当院は月曜日から土曜日まで午前中は胃カメラをおこなっています。
胃カメラでピロリ菌感染が疑わしい場合はピロリ菌の検査も可能です(その時の内服薬などの条件にもよるため、お薬手帳を持参ください)。
ピロリ菌とは、正式名称ヘリコバクター・ピロリと呼ばれる細菌で、ヒトの胃内の粘膜に棲みつき、ピロリ菌感染胃炎(慢性胃炎)を引き起こします。
これにより、潰瘍やリンパ腫、癌の原因となることがあります。また、ピロリ菌は胃炎以外にも、鉄欠乏性貧血や血小板減少症など消化管以外の病気との関連も指摘されており、日々研究が進められています。
ピロリ菌の基本情報
ピロリ菌はヒト以外の動物の胃にも感染することがわかっています。胃内の強い酸という過酷な環境でも生存できるように、自らの周囲の酸を中和するウレアーゼと呼ばれる酵素を産生します。
国内のピロリ菌感染者は人口の約3割とされ、衛生面の改善により減少してきていますが、依然として感染率は高い状態です。
ピロリ菌の感染経路
感染経路は正確には特定されていませんが、食べ物や飲み物などを通じて口から摂取することで感染することが考えられています。
そのため、ピロリ菌の感染が確認された場合、親や兄弟など、同居する家族も感染している可能性があります。
感染による症状
感染したピロリ菌は除菌しない限り、生涯にわたって棲み続けることが多く、ピロリ菌感染による慢性胃炎を引き起こします。
慢性胃炎の症状としては、上腹部痛やキリキリした痛み、胃重感などがあり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が発生した場合には、より強い腹痛や黒色便(タール便)が見られることがあります。
ピロリ菌と胃炎、潰瘍
ピロリ菌感染によって慢性胃炎がなぜ起こるのかについてはさまざまな研究が行われており、ピロリ菌が産生する酵素や毒素などがその原因とされています。
ピロリ菌による炎症が持続すると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍につながる可能性があります。
ピロリ菌と胃がんのリスク
ピロリ菌感染による慢性炎症が持続すると、がん発生のリスクが高まります。ピロリ菌に感染している場合、未感染の場合に比べて胃癌の発生リスクが15倍以上とも言われています。
また、ピロリ菌を除菌した後でも、慢性胃炎が残ることが多く、胃がんのリスクが高い状態が持続します。
したがって、ピロリ菌は除菌したら終わりではなく、除菌後も定期的な胃カメラが必要です。
どのような検査があるの?
ピロリ菌の検査は複数あり、状況に応じて検査方法を選択します。
①迅速ウレアーゼ試験、②鏡検法、③培養法の3つは胃カメラの際に採取した生検組織(胃粘膜組織)を使用した検査法です。
一方で、④尿素呼気試験、⑤血清および尿中ピロリ菌抗体検査、⑥便中ピロリ菌抗原検査は、胃カメラの生検組織を使用せずに行う検査です。
最も正確な検査は④尿素呼気試験ですが、常用している胃薬などの影響を考慮して検査を行う必要があります。
検査の流れと注意点
ピロリ菌に感染していることが検査で確認されれば、除菌が必要となります。除菌後は約1~3カ月の間隔を空けて、ピロリ菌の除菌判定(ピロリ菌がいなくなったかどうか)を行います。
一般的な治療法
ピロリ菌と診断された場合、除菌は抗生物質(抗菌薬)による治療を行います。最初は一次除菌と呼ばれ、一般的に効果のある抗菌薬を中心とした飲み薬を1週間内服していただきます。約1~3か月後に除菌判定を行います。
最近では抗生物質に対して耐性を持った(効きにくい)タイプのピロリ菌も存在し、一次除菌で除菌できない場合は二次除菌に進みます。
また、内服が十分でなかったり、途中でアレルギー反応などの副作用が出た場合も、二次除菌に進むことがあります。二次除菌でも除菌しきれなかった場合は、自費での三次除菌が必要となります。
除菌後の注意事項
ピロリ菌の除菌後は慢性胃炎の進行を抑えることは可能ですが、ピロリ菌が棲みついていた領域には慢性胃炎が残存することが多く、生涯にわたって胃がんのリスクが高い状態が続きます。
そのため、ピロリ菌除菌後も定期的な胃カメラによる検査が必要です。
参考文献: H.pylori感染の診断と治療のガイドライン 2016改訂版 – 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会